最初に疑われたのは父親だった。
1996年12月25日、米国・コロラド州ボルダーで6歳の国民的美少女が殺された。
少女は口をガムテープで塞がれ、首に紐で縛った痕、頭部に打撲傷。性的暴行を受けていた。
死因は絞殺。掌にハートのマークが書かれていた。
― クリスマスの惨劇 ―
1996年12月25日、少女とその家族はクリスマスパーティーに出席し、帰宅中に車の中で寝ていた少女を父親が抱きかかえて、自宅のベッドに連れて行った。
翌26日早朝、少女がベッドから消えており、母親は警察へ通報した。
捜査員は家中を探したが、地下室の1部屋だけ探すのを忘れていた。
家の中では、指紋が拭き取られた跡があった。
階段に犯人からの手紙があった。
手紙には「午前8時から10時までに連絡する。警察に通報するな。身代金11万8,000ドルを用意しろ」。
この家にあった黄色いメモ用紙3枚に手書きされていた。
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― 奇妙な一致 ―
10時を過ぎても犯人から連絡がなく、念のためもう一度家中を探したところ、前回探し忘れていた地下室で少女の遺体が見つかった。
捜査陣は身代金目的の犯行ではなく、性的暴行だけが目的で誤って殺害されたとの見解を示した。
身代金11万8,000ドルという数字は、父親のボーナス額と全く同じであった。これはこの家に精通している者の犯行を示唆していた。
まず父親が疑われた。
父親はもともとロリコン傾向があり、娘を性的に表現した文章も見つかったためだ。
しかしDNA鑑定の結果、少女の体内に残された精液と父親の体液が一致しないことが判明した。
― 振り出しに戻る ―
また、事件から数ヵ月後には少女と同じダンス教室の少女が何者かに誘拐されそうになる事件が起きる。
その後、2006年8月16日、タイ・バンコクで元教師の米国人男性が容疑者として逮捕されたが、DNA鑑定結果は不一致であり、再び事件は振り出しに戻った。
2008年7月9日、再度DNA鑑定が行われ、家族の全員の潔白が改めて証明された。
― 失点 ―
この事件では警察が現場保存の規制を怠ったため、少女の身体についていたとされる多くの物的証拠が両親の涙などで流されて消失し、捜査を難航させる結果を招いたといわれている。
事件を迷宮入りにさせかねない捜査陣の大きな失点といえそうだ。