― ちょっとした問題 ―
1970年7月11日、日曜の午後、モンタナ州イエローストーン川で釣り人が男性の屍体を発見した。腹部や胸部はめった刺しにされて心臓はえぐり出され、頭と両腕、膝から下がない。駆けつけた警察は屍体の状況に身震いした。

1970年7月11日朝、警察は金曜日の午後にイエローストーン国立公園に出掛けたまま行方不明だというジェイムス・シュロッサー(当時22歳)という男性の失踪届けを受け取っていた。警察は彼が乗っていたとみられるスポーツカーの捜索をまず始めた。彼は被害者である可能性が高い。

その頃、問題のスポーツカーは、カリフォルニア州モンタレーで小型トラックと正面衝突していた。トラックの運転手は、とりあえず警察に通報しようと近くのガソリンスタンドに向かうと、ヒッピー風の2人の男たちが森の中へ逃げているところだった。

事故車は被害者のスポーツカーであることが確認され、逃走していたヒッピーたちもやがて逮捕された。所持品検査をすると、ブロンドの男のポケットから骨が出てきたので、これは何だと尋ねると
「人間の指だよ。」
「俺にはちょっとした問題があるんだ。人喰いなんだ。」

彼の名前はスタンレー・ディーン・ベイカー(当時23歳)、無職だった。所持品は、LSDと「サタンのバイブル」という悪魔崇拝の本だった。

― 事件の顛末 ―
1970年7月9日、金曜日の夜、シュロッサーは途中で拾ったヒッチハイカーのベイカーを乗せ、キャンプ場へと向かった。あいにくどこも満杯で、イエローストーン川の岸辺でキャンプを張ることにする。

LSDを服用したベイカーは、錯乱状態に陥りシュロッサーの頭に22口径を2発撃ち込み、ナイフで滅多刺しにし、死んだシュロッサーの頭と両腕、両脚を切断したうえに心臓をえぐり出し、生で食っている。
屍体と拳銃を川に捨てたベイカーは、シュロッサーの車で現場を離れ、連れのヒッピーを拾って事故を起こしたのだ。

裁判でベイカーは有罪となり、彼は刑務所に収監されたが、満月の夜には遠吠えをするなど不可思議な行動をとっている。しかしこの狂人は、収監後から6年後の1979年にワイオミング州で仮釈放されている。