2004年6月1日午後、長崎県佐世保市の小学校で世間に大きな衝撃を与えた事件が起きた。6年生の女子児童が同級生の女児にカッターナイフで切り付けられ、死亡したのである。死因は首をカッターナイフで切られたことによる多量出血だった。
犯行の現場は、2人が通う長崎県佐世保市立大久保小学校であった。給食を食べる時間に6年生の女子児童2人の姿が見えず、加害者の女児のみが帰ってくると少女の服には血がついていた。
「私の血じゃない」少女はそう叫んだ。
被害者の女児の居所を担任が尋ねると、少女は50mほど離れた「学習ルーム」の方を指差した。服に血のついていた加害女児に事情を聞いたところ、カッターナイフで切りつけたことを認めた。
加害女児は被害者を学習ルームに呼び出したあと、カーテンを閉めて床に座らせ、手で目を隠し首を切りつけた。被害者の首の傷は深さ約十センチの深い傷で、切りつけたあとも約15分間現場にとどまり、死亡するのを確認した。
― 少女の実態と事件が起きるまで ―
加害女児は父母、姉、祖母と暮らしており、病気で倒れた父親の代わりに、母親がパートの仕事をして生計を支えていた。
5年生の時にミニバスケットボール部に入って楽しく練習していたが、成績が下がり始めたため、両親に辞めるように命じられた。加害女児は泣きながら監督に退部を申し入れ、直後のHPには「私には親なんてもういない」と書いた。
加害女児は5年生の終わり頃から不安定になったと言われている。机などを蹴っ飛ばしたり、男子を叩いたり蹴ったりするようになった。事件の1週間前には、男児にカッターナイフを振り上げるということもあった。
加害女児と被害女児は仲が良く、パソコンでチャットをしたりHPを作って、掲示板に書き込みをする仲でもあったが、些細なことで険悪になっていた。
5月には、事件を起こすきっかけとなる出来事が起きる。
「おんぶごっこ」をしていた時に被害女児から「重い」と言われ、加害女児は謝罪を求めたが、事件の4日前に被害女児のHPに「言い方がぶりっ子だ」と書かれてしまう。加害女児はパスワードを使って被害女児のHPに侵入し、書き込みを削除したりして、荒らしと呼ばれる行為を行なった。
また、HPでバトル・ロワイアルの同人小説を発表しており、それは6年生のクラスと同じ人数の38人が殺し合いをするストーリーで、各キャラクターモデルや名が同級生に似ているといい、被害女児と思われる人物は物語の中で殺害されているという。
加害女児が前夜に見たテレビドラマ「ホステス探偵危機一髪6」でカッターナイフで殺害するシーンがあり、各テレビ局が殺人ドラマの放送を自粛する事態にもなった。また、加害女児が熱中していた「バトル・ロワイアル」に似た場面があることもあり、事件への影響も指摘されている。
加害女児は栃木県氏家町の自立支援施設「国立きぬ川学院」の特別室に収容され、人間関係の築き方や感情のコントロールなどを体得するプログラムを受け、ここで医師から「アスペルガー症候群」と診断された。