アメリカ、フロリダ州。自然が多く気候が温暖なこの地域で悲劇はおきた。
― 連続放火殺人 ―
1993年8月7日、80歳になる未亡人が火災で死亡した。
家には煙探知機が設置されており警報が鳴ったはずだが、高齢のせいで聞こえなかったのか、彼女は黒焦げになっていた。
同年8月17日、今度は72歳の未亡人宅が焼け落ちた。
この時も探知機の警報が役に立った形跡はない。
1週間後、80代の老夫婦が住む家が炎上。しかし消火活動が早く、ふたりは無事救助されたが、その頭部には強い殴打のあとがあったので、警察はこれを失火ではなく、誰かが老夫婦を殴ったあと放火したものであると見なした。
老夫婦は数日後に意識をとり戻したが、犯人の顔は見ていなかった。
2週間後、79歳の未亡人が自宅で焼死するという事件が起きた。
さらに数日後、87歳の未亡人が同じく焼死。
この家は半焼で済み、遺体は皮膚こそ焼け焦げていたものの、検死不能なほどの損傷をこうむっていなかった。
検死の結果、被害者は凌辱された上で絞殺されたことがわかった。
よほど強い力で絞めたものか、舌骨と首が折れていた。また家具から採取された指紋が、過去の収監者データからコンピュータでピックアップされた。
事件は一気に解決に向かった。
犯人はエドウィン・カプラット(29歳)。麻薬中毒者で、証拠不十分で起訴こそまぬがれたものの、放火の前歴があった。
カプラットは定職を持たず、未亡人の家を訪ねてまわっては力仕事を申し出たり、庭いじりをしたり、話し相手になってやったりして小遣いを稼いでいた。
カプラットは逮捕後こう告白した。
「婆さんたちは、性行為をすると大抵、心臓発作を起こして苦しがるんだ。だからあんまり苦しませちゃ悪いと思って、俺は首を絞めてやったんだよ」