1978年1月2日、オハイオ州バーノンのトレーラーハウスで火災がおきた。
トレーラーハウスの中には主人ドナルドと、妻の連れ子であるまだ5歳のクリストファーがいた。ドナルドとクリストファーは必死の消火作業にも関わらず焼死した。
― 生存者 ―
生存者はドナルドの妻ジュディスと、6歳の息子と9歳の息子。
事件を担当した地元警察は、現場検証の結果とジュディスの証言に食い違いがいくつかあるのを発見した。
ジュディスは暖炉が爆発したと言ったが、その痕跡がなかったこと。次にドナルドの死体から右耳がちぎれており、焼け跡でそれらしきものが発見されているが、騒ぎの最中に紛失してしまったこと。
そして不気味だったのが現場から焼け焦げた黒魔術や悪魔崇拝の本が見つかったことだ。ジュディスが「知らない、見たこともない」と言ったこと。
そして9歳の息子ジミーはもう証言できる年齢のはずであったが、貝のように口を閉ざしたまま何も語ろうとはしなかったこと。
この事件は「何者かの放火による犯行」とされ迷宮入りとなった。
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― 15年後の真実 ―
それから15年後、レイプの罪で懲役12年から14年の刑を受けた若い男がいた。
この男の名を新聞で見て、ある男は興味をしめした。トレーラーハウス炎上事件の捜査にあたっていた刑事である。
レイプ犯の名はジミー・コテンティン。火事の生き残りだった当時9歳の息子だ。
刑事はジミーのいる州立刑務所に面接に訪れ、「15年前の事件の捜査員だ」と名乗った。するとジミーは目に見えて震えだし、顔を伏せて泣きはじめた。
「あのときは言えなかった。犯人はお袋です。お袋が親父の頭を灰皿で殴って、家に火をつけました」
このジミーの証言により、ドナルドとクリストファーの遺体が掘り返され人骨が検死にまわされた。ドナルドの頭蓋骨は強い殴打のため陥没しており、肋骨にはナイフでの刺し傷が何箇所も発見された。
1993年11月、公判が開かれ、42歳になっていたジュディスが召喚された。
証言台に立ったジミーは「放火犯を指さしてください」と言われ、ためらいもなく自分の母親を指さした。
犯行当夜、夫に不貞を責められたジュディスは口論の末、彼を灰皿で殴り、刺し殺したあと、家に放火して逃げた。
クリストファーが死んだのは偶然で「連れていくのを忘れた」だけだという。
またドナルドの耳を切ったのは「黒魔術に凝ってましたので、捧げもののつもりでした」と説明した。
ジュディスは終身刑を宣告された。