佐賀・北方町大峠の国道34号線でドライブ中の夫婦が、仏壇に供える花を摘もうと車を降りたところ、女性の遺体を発見した。
1990(平成元)年1月27日の17:50頃だった。
―3体の遺体―
佐賀県警は遺体の確認と現場周辺の捜査を開始したところ、女性の遺体の横に別の腐乱した女性の遺体を発見。さらにその近くに白骨化した遺体も発見した。
最初に見つかった遺体は2日前に失踪していたAさん(37)、腐乱した遺体は1ヵ月前に失踪していたBさん(50)と判明した。
白骨化した遺体の歯型を照合した結果、1年半前に失踪していたCさん(48)であることが判明した。
―国道34号線の怪事件―
この国道34号線沿いでは、1980(昭和55)年6月には小学校のトイレの便槽でDさん(20)と中学1年生の女子(12)の殺害遺体が発見されている。
翌年の1981(昭和56)年10月には、Eさん(27)が電気コードにより絞殺。
1982(昭和57)年2月には小学5年生の女子(11)が畑で絞殺されるなど、未解決の女性殺害事件がすでに4件も発生していた。
事件はいずれも犯行現場を中心に半径3km内。金品は盗られていなかった。
この計7件の殺害のうち6件が水曜日の夜に失踪しており「水曜日の絞殺魔」と呼ばれた。
―容疑者逮捕―
2002(平成14)年6月11日、捜査本部はAさん殺害容疑で無職の江口重雄(39・仮名)を逮捕した。
調べでは1990(平成元)年1月25日夜、交友関係にあったAさんとドライブ中に口論となり言い争っているうちに首を絞めて殺害し大峠の雑木林に遺棄した疑い。
江口被告は佐賀地裁の初公判で3件(Aさん、Bさん、Cさん)の起訴事実を全面的に否認。無罪を主張した。
検察側は江口被告に対して死刑を求刑した。
2005(平成17)年4月10日、佐賀地裁は「3事件とも被告が犯人であることを積極的に推認できる証拠や事実は存在せず、犯罪の証明がない」と述べ無罪を言い渡した。
江口被告の無罪判決により真相は闇の中となった。
その後、懸命な捜査も空しく7件の事件は次々に時効の日を迎えている。